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2011年08月06日 (土) | Edit |
とうとうこの日がやって来た。

と言うか、1週間もあの男と面会もせずに業務をやって来た事自体がある意味異常事態だったのかもしれないが。
それでも、あの男との対面は緊張を強いられる一大行事なのだ。
今日の呼び出しはこの男の計画的なものを感じる。
何しろマリウス教授は朝から学会へ、そしてホークアイ大尉も出張中だと言うのだから。


「久しぶりだな。元気そうだ」
変わらぬ魅力のあるバリトンが囁く。
いや、その声だけではない。本当に久しぶりに会った彼は将軍の貫禄も身について来たのか
一段と男として艶っぽく、そして魅力的になっていたから。
困った事に、それだけの台詞で彼との蜜月を思い出してしまうのは、自分の中でまだ清算がつかないからだろうか。
いや、違う。
きっとこの男を前にすれば誰もがこうなるはずだ。
大勢の人間を従わせる事の出来るカリスマ性と、オーラの持ち主。
あの北の女王でさえ、彼の事を認めるような内容を口にしているのだから。
少し離れていただけで、こんなにも変わってしまったのかと正直驚く。
きっと、彼の中にはもう自分との事等過去の忌むべき歴史になっているだろう。
それはそうだ。
自分のような女に一時的な気の迷いとは言え、求婚までしたのだ。
その上、その場で断ると言う。他の人間から言えばクレイジーだと言われても仕方のない行動を取った。
でも…今彼をこうして目の前にしても。あの時の返答は間違っていなかったと言い切れる。
そう、決して後悔はしていないし、それに今となってはもう意味の無い事だ。
何しろ、彼はもう直ぐ相応しい女性と婚約するのだから。

エドワードは小さく深呼吸をすると、軍人の真似事の様におざなりな敬礼をして
「お久しぶりです、マスタング少将。遅ればせながらこの度の少将への昇進おめでとうございます」
極力声のトーンが変わらぬように返答すれば、目の前の男は秀麗な眉を顰めると
溜息を声に出して椅子から立ち上がった。
その行動に思わず心臓が飛び跳ねそうな程緊張するが、それも相手に気付かれないように正面から彼の目を見詰め返す。
小気味良い軍靴の音が響き、自分との間合いが詰まる。
その音さえ怖くて、目を閉じた。
本当なら回し蹴りでも食らわせて、脱兎のごとく部屋から飛び出したい気分だったが
そんな事をしても何もならないのだと己に言い聞かせる。
本当に、15歳の自分なら間違いなくそれを実行していただろうが。

でも、自分はもう子どもでは無いし。
何より、この試練を越えなければ前へ進めないし、何も変わらないのだから。
ギュッと拳を握り締めて、再び目を見開けば
其処には思った以上に近づいて居た男の顔があった。
そして、何を思ったのかそっと自分の頬に手を添えて来たのだ。

「しょ……」
「どうした?気分でも悪いのか。君がそんなに大人しいなんて、悪いものでも口にしたのかね。それともお腹が減っているとか?」
「──────少将。自分はもう18歳になったのですが」
マックスで眉間に皺を寄せれば、男はクスクスと嬉しそうに笑う。
そんな微笑みさえ魅力的に見えて……ああ、やはりこの男は───自分の知る限り一番良い男だ。
うっとりと見惚れていたのが相手にも判ったのだろうか
男は困ったように微笑んで、自分に羽のようなキスをしてきた。
「なっ!!」
真っ赤になって後退れば、男はしれっと肩を竦めて
「いや、済まない。君の唇が余りにも魅力的だったから」
「阿呆!何をそれが当然って顔でセクハラしてんだよ。しかも此処は執務室。職場だぞ!職場!」
「ああ、そうだった。いや、でも久しぶりに会った恋人が想像以上に綺麗になっていれば、当然の行為だと思うが」
「何を俺様持論展開してんだよ!大体俺とあんたはもう終った関係だろうが。そうだ、婚約するんだってな。おめでとさん!」
フンと言って腕組みをすれば、漆黒の男はヤレヤレと首を振って

「婚約じゃない。契約だよ」
「え?」
驚いた顔で聞き返せば、男は勝ったとばかりに妖艶に微笑む。
「だから、君との関係は変わらないよ。今までと一緒だ」
「…………俺に愛人にでもなれって言うのかよ。あんた、いずれその婚約者と結婚するんだろう?」
「さて、それも展開次第だが。どちらにしても、此方もあちらも所謂一般の夫婦生活をしようという意図は無いんだよ」 
「意味がわかんねー」
正直にそう呟けば、男は判ったとばかりに恋人の手を取る。
「エド。君にはちゃんとこの状況を説明したかったんだよ。しかも、誰かの口からでは無くて私自身でね。なのに、君は全く私と会ってくれようともしないし、強引に此処に連れてくれば少しは接してくれるかと思っていたのに。それさえ無い」
心底悲しそうに眉を下げる男に、エドワードはその顔は反則だろうと呟きながら目を逸らす。
「あんた、相変わらずズルイ男だな」
「光栄だね。君と言う恋人を再びこの手に出来るならずるくても良いし、姑息だと言われても構わないよ」
「それがズルイって言ってんだよ。あんた、マジで変わらないなロイ」
うがーと怒鳴る恋人に、漆黒の男はようやく安堵したように微笑んで
「良かった。やっと普通にしゃべってくれるようになったね」
「少将?」
「エド。二人っきりの時は名前で呼んで欲しいと言っただろう、忘れたのかい」
優しく右手を取った男は、その白い手の甲に恭しくキスを落とす。
エドはそんな気障な男の行為に、耳まで真っ赤にして慌てて手を引っ込める。
「馬鹿!此処は職場だって言っただろうが」
「じゃあ、職場で無ければ良いんだね」
「はぁ?」
「よし。では、今日は仕事は定時で上がり給え。時間丁度に迎えに行くから、君に是非会わせたい人がいるんだよ」
粋に片目を瞑ってそう言った男に、エドは猜疑心たっぷりの視線を向ける。
「あんたがそんな風な表情をしている時って、碌な事考えていないんだよな」
「さて、どうかな。でも、私は誰よりも君に私の事を理解して欲しいと思っているからね、その判断は嬉しいよ」
真摯にそう宣言した男に、エドはぐっと下唇を噛んで俯く。

──────ああ、やはり自分はまだこの男に惚れているのだ。
出会った時から一目惚れに近いのだし、この男以外の人間と付き合ったことも無いからそう思うのだろうか。
それとも、自分の中にまだ色々な答えが見つけられていないからこんなにも迷ってしまうのか。
そうだ。自分は何一つ答えを見出せて居ないこの状況から抜け出したくて、もがいているのかもしれない。
将来の事、アルの事、そして自分の進むべき道を………



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